text:Yuki Yoshida
コラボコーヒーの発売にあたって複数人にお話を伺うなかで、何度となく出てきたフレーズです。それも皆、ナチュラルに言うんです。
なぜだろう?
ランナーとコーヒーには、理論と感覚に裏付けされた深い関係性があるようです。
今回は、プロランナーの神野大地と、RETO事業の責任者でありランナー(サブ2.5)でもある高木聖也にインタビュー。「コーヒーの取り入れ方」や「ランナーとコーヒーの関係性」、「コラボコーヒーへの想い」を語ってもらいました。
例に漏れずコーヒーが好きな二人のお話をもとに、「ランニングブランドが、なぜコーヒー?」を紐解いていきたいと思います。
「RETOから、いつかコーヒーを出せればと思っていた」
高木聖也(以下、高木):自分がコーヒーを好きというのもあり、コーヒーとRETOを絡められたらとずっと思っていて。今回、それが実現した形です。
走る前にコーヒーを飲むエリート選手もいるくらい、コーヒーはランナーにとって身近な存在だと感じています。統計をとったわけではないですが、ランナーにコーヒーを好きな人が多い印象があって。「走る前に、コーヒー1杯」「ジョグした後に、カフェに寄る」などを、自然に実践している人が多いんです。神野もよく飲んでます。
神野大地(以下、神野):僕もコーヒーが好きで、1日に2杯くらい飲んでいます。朝ご飯を食べた後に1杯、お昼ご飯の後に1杯が基本です。自宅に豆を挽く機械があるので、家にいる時はそれを使って。カフェもよく利用します。
コーヒーを日常に取り入れるようになったきっかけは?
── コーヒーを習慣にされたのはいつからですか?今のスタイルが確立された経緯を教えてください。
神野:実は僕、元々コーヒー飲めなかったんです。大学生の頃は、どうしてもおいしいと思えなくて。聖也さんを含め、陸上部内でコーヒーを飲んでる人は多かったです。朝から自分で淹れている人、部屋に缶コーヒーを常備している人、スタイルは色々でした。
コーヒーを好きになったのは、社会人1年目の頃、日本陸連の選抜合宿に参加した時の偶然の出来事がきっかけです。朝食後、「コーヒー飲む人〜?」って聞かれた時に、選手だけじゃなく、スタッフさんを含めたその場の全員が手を挙げていて。僕はブラックは飲めなかったんですけど、砂糖とミルクを入れれば飲めたので、それを飲もうと思って手を挙げました。
次に「お砂糖とミルクいる人〜?」って聞かれた時、誰も手を挙げなくて。躊躇してたら、挙げ損ねてしまいました(笑)。その日は頑張ってブラックコーヒーを飲みました。
2日目、今日こそは砂糖とミルクをもらおうと思っていたら、聞かれなくなったんです(笑)。それはそうですよね、1日目で全員ブラックがいいってわかってたので。それからは、毎朝、当たり前のようにブラックコーヒーを提供していただく日々が続きました。
そうすると、7日目頃、本当に不思議なんですけど、「そろそろコーヒーかな?」と待ち望んでる自分がいました。それから、朝のコーヒーが日課になりました。
あんなに苦手だったコーヒーの味が、今では本当に大好きで。今はブラック一択です。
カフェインによるパフォーマンスアップ、実際どう?
── ランナーがよくコーヒーを飲んでいるのは、何かの効果を期待しているからでしょうか?「目が覚める」「集中力が上がる」などはよく聞きますが、それと関係がありますか?
高木:特に持久系のスポーツにおいては、カフェインの効果に関する確かなエビデンスが存在します。コーヒー好きのランナー全員が効果を期待して飲んでいるわけではないと思いますが、大会前に適正な量のカフェインを摂取すべきという見解があるのは事実です。
── 何か実体験はありますか?
高木:トレイルランニングで100kmを超えるレースに出場する時に、戦略的にカフェインを摂っています。カフェインのお陰と言いきってしまうのは難しいんですが、身体が相当疲弊している時にカフェインを摂ると、楽になるんです。そういう時に効果を実感します。
神野:カフェインを摂ることで、集中力が高まるのを感じたことは何度もあります。ただ、僕の場合は、毎日飲んでいると効果を得にくいと思っていて。
過去に実践したことがあるんですけど、大事なレースの前って、カフェインを抜くんです。1週間程カフェインを抜いて、当日のレースの1時間前に飲む。そうすると、目がバキバキになります。それくらいカフェインって偉大で。僕の周りにも、そういう風にカフェインを摂っているマラソン選手はいます。
神野:今はどちらかというと、カフェインの効果を求めるというよりは、生活における幸福度が上がるからという理由で毎日飲んでいます。朝、練習を頑張って、朝食を食べて、その後にコーヒーを飲むのが楽しみで。このコーヒーにたどり着いた時、「本当に幸せだな」って心から感じるんです(笑)。
コーヒーを飲むのが楽しみだから練習を頑張れる。飲んで気合いを入れる。僕の場合は、コーヒーを飲んだから勝手にスイッチが入るというより、飲んでスイッチを入れるというイメージでコーヒーを取り入れています。
── 戦略的に飲む人もいれば、気持ちを切り替えるために飲む人もいる。単に好きだからという人ももちろんいるだろうし。人それぞれなんですね。
神野:そうですね。コーヒーを含め、カフェイン摂取に関する考え方はさまざまです。僕の場合はコーヒーの味が好きで、毎日飲むことを優先していますが、ドーピング規制のないパフォーマンスアップ成分として、レースで活用する理論もあるわけで。理論や感覚を踏まえながら、思い思いに取り入れていただくのがいいのかなと思っています。
コラボコーヒーは、試飲会を経て完成
コラボコーヒーを手がけるのは、大阪のスペシャルティコーヒー専門店「TERRA COFFEE ROASTERS(テラコーヒーロースターズ)」。経営を行うTCR(株式会社ハーモニー)では、コーヒーとスポーツをかけ合わせた「TCR.CLUB」の運営を通して、スポーツをする人が集う場所の創出にも力を入れています。
TCRとRETOが繋がったのは、コーヒー好きで、スポーツ好きの共通の知人の存在があったから。コミュニケーションを重ねるうちに、理念やコミュニティ運営、将来について……色んな話で盛り上がり、自然な形でコラボが進んでいったのだとか。
── 試飲会での意見交換があったそうですが、製品化はどのように進められたのでしょうか?
高木:試飲会では、全部で6種類のコーヒーをご用意いただいて。自分たちの好みをお伝えし、コラボコーヒーに反映していただきました。
浅煎り、深煎りの両方があって、それぞれで味わいが違うんですが、本当にどれもおいしくて。最終的には、酸味が強過ぎず飲みやすい浅煎りのものと、健康的な印象を受けた深煎りのものを選びました。
── 浅煎りのコーヒー、普段見かける機会はそんなに多くない気がします。元々馴染みがあったんでしょうか?
神野:僕は元々浅煎り派で。コーヒー専門店ではじめて浅煎りのコーヒーを飲んだ時に感動して以来、選べる機会があれば、積極的に浅煎りを手に取るようにしています。今回、浅煎りだけでも3種類試飲させていただいて。フルーティーなもの、酸味を感じられるもの、はじめて味わうようなものがあり、一番好きなものをお伝えさせていただきました。コーヒー本来の味わいをすごく感じられると思います。ぜひ実際に飲んでみていただきたいです。
── コラボコーヒーは、どんな人に飲んでほしいですか?
高木:目標達成に向けて頑張るランナーの方に、というのもありますが、このコーヒーは、コーヒー通の方でも満足できると思います。多くの方に、本物のコーヒーを味わっていただけると嬉しいです。
【コラボコーヒーの購入はRETO公式サイトから】
・KENYA KARIAINI AA [Light Roast]
柑橘系のしっかりとした酸味と甘さが特徴。酸味の変化を楽しめる1杯
・BRAZIL CARACOL COMMUNITY NATURAL [Dark Roast]
甘さとクリーミーなボディが特徴。ブラジルらしいテロワールを感じられる1杯