「異端児」という共通項に見る、IKEUCHI ORGANICと神野大地のものづくり

「異端児」という共通項に見る、IKEUCHI ORGANICと神野大地のものづくり

Text: yuki yoshida

愛媛県・今治のタオルメーカー「IKEUCHI ORGANIC」とプロランナーの神野大地、両者にはきっと、共通項があるはずです。

 ……というのも、IKEUCHI ORGANICと“IKEUCHI ORGANICが好きな人たち”との間には、確固たる何かがあって、両者が同じ方向を向いている、と感じられるから。

IKEUCHI ORGANICが、どうして神野大地とものづくりをしようと思ったのか?

IKEUCHI ORGANICの池内計司代表と広報の牟田口武志さんにお話を伺いました。

池内計司代表

 


牟田口武志さん
画像提供:IKEUCHI ORGANIC 株式会社

 

「世界一、安全で精密なタオル」を掲げるIKEUCHI ORGANIC

 ── まずはじめに、簡単に自己紹介をお願いします。

池内計司代表(以下、池内):代表の池内です。現在のパナソニックに入って、オーディオブランドのテクニクスの立ち上げから12年ほどそちらにいました。その後、今治の家業であるタオルのほうに帰ってきて現在に至ります。

帰る直前に創業者の先代が亡くなったので、私自身は引き継ぎがないまま社長をやっているという形だったんですが、今は三代目の阿部に社長をしてもらっていまして、私はひたすらつくりたいものを勝手につくって、という気楽な立場でやっています。

── ありがとうございます。牟田口さん、お願いします。

牟田口武志さん(以下、牟田口):私は今から7年前にIKEUCHI ORGANICに入社しました。その前は、大学を出て映画会社やTSUTAYAの会社、直近だとAmazonにいました。IT畑が長かったので、実態のあるものやものづくりにすごく憧れていて、きちんと手触り感のあるものを直接お客様に届けていきたいというのがあり、ちょうどタイミングと縁が重なって7年前に入社をしています。

現在は、広報のほかに営業の責任者でもありまして、WEBまわりや店舗、営業などをみています。マーケティングに関しても自分が担当しています。資格は、タオルソムリエという資格を持っています。これはうちの社員が全員取らないといけない資格で……。

池内:僕は持っていないです。

牟田口:あ、そうですね、代表だけ(笑)。

今治のタオル工業組合がブランディングをリニューアルしたときに、タオルソムリエの制度ができました。タオルの成り立ちだったりとか、どういうふうにお客様に勧めるかだったりのテストを受けて資格を持つことができます。


きっかけは箱根駅伝 2年前から打ち合わせを重ねてコラボが実現

── 「RETO」とコラボするきっかけは何だったのでしょうか? 

牟田口:「RETO」の責任者の高木さんと知り合ったのがきっかけです。高木さんがお店に来て商品を買ってくださったときに名刺を残していただいていて。後ほどスタッフから共有してもらったんですが、「神野大地さんのマネジメントをされてる方だ!」とびっくりしたのを覚えています。それで連絡をとったところ、高木さんがもともとうちのECサイトでタオルを購入されていて、持っていたというのがひとつあって。

 あとは、僕がすごく駅伝が好きで、実は細々と、母校の箱根駅伝出場が決まるとうちのタオルを差し入れしていました。その繋がりで母校出身の選手とコンタクトをとっていて、それで高木さんがIKEUCHI ORGANICの話を聞いたことがあったみたいなんですよね。

 それで、来店をきっかけにやりとりをしていて、IKEUCHIのタオルをすごく気に入っていただいていたので、今回の話がはじまったという形です。

2年ほど前から打ち合わせをしていて、タオルのコラボの話が出たこともあったんですけど、当時神野さんはスポーツメーカーさんとスポンサー契約をされていましたし、いきなりコラボレーションするというのは条件的にも難しいのかなというところで、その間もやりとりはあったんですけどだいぶ期間がかかったんですよね。

しばらく経ってまた「一緒にやりたいですね」という話になって、ちょうど私たちもアスリートサポートというプログラムをリリースしたタイミングで、「何か一緒にやりましょう」という話が今度はトントンと進んでいきました。

── 先ほど、途中段階で「コラボするのが条件的に難しそう」とおっしゃいましたが、具体的にどんなところが難しかったのでしょうか?

牟田口:やはりスポンサーですね。神野さんはスーパースターなので、スポンサーがメインでついていらっしゃいます。どうしても僕らはお金をたくさん出せるわけではないので、タオルだけ契約するというのはハードルがありまして。これは神野さんに限らずどの選手でもそうなんですけど。なので、ほかのメーカーさんとの兼ね合いもあって、なんとなくですが、一緒に何かをするというのがお互い難しいのかな?みたいな感じで、一旦保留になったというイメージです。

スポーツをやったことがない人間からすると、アスリートの感性って、想像の領域外

── IKEUCHI ORGANICが神野選手とコラボする意義みたいなものを、お二人それぞれ教えていただけますか。どうして神野選手なんでしょう?

池内:僕は生まれてこのかたスポーツをやったことがなくて。もう、体育の時間が一番嫌いで。で、スポーツマンの典型って、アスリートじゃないですか。アスリートの方の感性って、僕はまったく理解できないので、だから、アスリートの方がどういう気持ちでタオルを使っているかというのが僕にとっては想像の領域外なんですね。

これはたまたま、今から25年くらい前の神野さんみたいな方と知り合いまして、彼も箱根を走っているんですけど、「走り切る最後の瞬間を自分の好きなタオルで迎えられたら」というようなことを聞く機会があって。(神野さんも)僕らとは全然違うひとつの感性を持っているんだろうな、とすごく興味があってやらせてもらいました。

神野さん、めっちゃ細かいですよ(笑)。先日直接会って話したんですけど、僕なら気にかけないところが気になるようでした。それはまた後ほど話しますね。

── ぜひお願いします。
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── 牟田口さんからも教えていただけますか。

牟田口:もともと箱根駅伝がすごく好きで、箱根に行って応援するくらい好きなんです。神野さんが走られたときも、神野さんのことをリアルタイムでテレビで観ていたんですけど、そのときの印象が強くて、本当にすごい選手だなというのを感じていました。

神野さんとこの前お会いしたときに、高校ではそこまですごい選手ではなかったというふうにおっしゃっていたんですね。僕も記事で読んだことがあったんですけど、本人が努力でグングン伸びていったというところがすごくいいなと思っていて。圧倒的な努力の人、切り拓いていける人といいますか。あの5区の山登りの姿は未だに思い出せるくらい感動しましたし、個人的に好きな選手だっていうのはひとつあります。

あとは、最初に高木さんにお会いしたときに、高木さん自身が IKEUCHI ORGANICのことをすごく好きで、熱量を持ってお話していただいたというのも非常に大きいですね。

単純に有名な選手だからコラボをお願いしたいというわけではなくて、まず前提として IKEUCHI ORGANICの理念だったり製品だったりを気に入ってくださる方というところでお願いをしているので、神野選手や高木さんとそこがマッチしたというのが大きいです。

── そうですよね、ブランドサイト「イケウチな人たち。」を拝見しても、すごく本質的な部分を大事にされている印象があって。

牟田口:「イケウチな人たち。」に出てくださっている方は、シェフだったり美容院やホテルのオーナーさんだったりなど、色んな業種のプロフェッショナルなんです。業種関係なく色んな業界の方に出ていただいていますが、共通するのは、うちの代表の池内もそうなんですけど、もう、異端児なんですよ。

── 異端児……!?

牟田口:王道ではなくて(笑)。自分たちの業界の中に染まらず、ほかの業界の人ともどんどんネットワークを繋いでいって、目線が自分というよりお客様目線、ファン目線なんですよね。なので、業界全体を、業界の中からだけでなく外ともうまく連携して世の中に影響を与えていくというところがあって。

神野さんも、そういうところがすごくあるのかなと僕は思っていて。お会いした当時から「RETO」のグッズを販売されていて、なんかほかの選手とは違うなと思っていたんですよね。単純に収益を上げるためにグッズを売っているわけではないと感じていて、たぶんそれは、ランナー全体にもっといいものを使ってもらいたいだとか、そういう思想があるんじゃないかというのがなんとなく肌感覚で感じられて、そこも大きなポイントです。

── 価値観が合うか、というのを見ていらっしゃるんですね。

牟田口:そうですね。まずは私たちの企業理念である「最大限の安全と、最小限の環境負荷」に共感いただいていること、イコール、使い手として長くいいものを使い続けたいという思想があるかどうかです。取っ替え引っ替え使い捨てでというのでは困るもので、IKEUCHI ORGANICのコットンはオーガニックコットンで、コットンのなかでも1%しか収穫できなくて、農家さんが丁寧に手摘みをしていて……というものなので、大切に扱ってくれるかどうか。そこの文脈をきちんと汲みとっていただけるかということですね。

あとは、商品のよさを自分で体感できる方。本当に好きかどうかというのは、見ていてやっぱり分かるんですよ。

力強さ、意志の力、すごい力を秘めている

── 神野選手の印象や、彼から受ける影響みたいなものを教えていただけますか。

池内:これまではオンラインだったんですけど、先日本当にお会いしたときに、神野さん、無駄なものがまったくついてないんですよ。もうマジマジと見てて(笑)。僕は体脂肪率が30%くらいありそうな生活をしていて、生まれたときからずっとこうなんですけど……。

「普段何を食べているんですか?」って聞いたら、「僕、食べ物全然関係ないです」とおっしゃって。信じられないですよね、僕なんか生まれたときからずっとお腹が空いているのに(笑)。

神野さんは何も言わないけど、普段からものすごいトレーニングをされてるんですよね。いくら聞いても言わないんですよ。

── そうなんですか。

池内:でも毎日30kmは走りますとおっしゃっていました。そのときの天気や自分の体のことを考えて調整すると言われていましたけど、もうなんか聞くことすべて、僕とは別世界の方で。ひたすら聞いていました。

── 結構ガッツリ一緒に飲まれたとか。

池内:お酒というか、ご飯ですよ。行こうと思っていたお店が全部閉まっていて、お昼をちゃんと食べられなかったので、夜食べましょうという感じで。どっちかというと、僕と高木さん二人だけが飲む感じで、神野さんは僕らが飲んでる間にソーダ割り1杯だけだったような気がします(笑)。けど、嫌な顔せず付き合っていただきました。

── (笑)。

牟田口:僕は2回直接お会いしていて、はじめてお会いしたときは、単純に「テレビで見た方だ」と思いました(笑)。テレビで見た印象と、変わりはしませんでした。ひとつのファン目線で「神野さんだ」ということと、思ったより華奢で、でもすごい力を秘めているんだろうなという印象を受けました。

実際にお話していると、本当に好青年で、スポーツマンらしく礼儀正しく、でも自分の意志の力みたいなものはすごく感じました。とくに真面目になった表情からは力強さというか、意志の強さを感じますね。でも話しているときはすごく穏やかで。

あとはお話がすごく上手ですよね。伝えることに長けているといいますか、コミュニケーションの能力が高い選手だと思いました。

アスリートを応援する、IKEUCHI ORGANICのタオルサポートプログラム

── 先ほども少しお話が出ましたが、タオルサポートプログラムについて教えてください。どうしてIKEUCHI ORGANICさんは、熱心にアスリートの方を応援していらっしゃるのでしょう?

牟田口:アスリートの方たちとお話させていただくなかで分かったことがあって、スポーツ選手って全然いいタオルを使っていないんですよね。神野さんにインタビューしたときにもおっしゃっていましたが、タオルにまでこだわっている方があまりいなくて。でもそこに不満を持っている方が一定数いらっしゃって、その不満というのが、「顔を拭くと毛羽がつく」とか「全然水を吸わない」とか、本当にもうタオルの基本中の基本が抜け落ちたようなことで。そんな現状に愕然としまして(笑)、これは変えていかないといけないよねと思ったのがきっかけとしてあります。

あとはやっぱり、スポーツの影響ってものすごく大きいと思っていて。僕は小学生のときに野球をやっていて西武ファンだったんですけど、西武の選手に握手をしてもらったりノックをしてもらったりという機会があって、その体験を未だに覚えているんですよね。スポーツ選手から元気をもらえるってあると思うんですけど、スポーツ選手の人に対する影響力は非常に大きいなと感じていて、スポーツ選手がいいタオルを使ってくれれば、IKEUCHI ORGANICのタオルももっともっと多くの方に興味を持ってもらえるだろうなというのもあります。

スポーツ選手に限らずですが、いいタオルを使っている人がまだまだいないのが現状です。いいタオルを1枚使うだけで人生が大きく変わることはないかもしれませんが、少しずつ少しずつ変わっていくと思っていて。アスリートの方にもぜひいいタオルを使っていただきたいという想いで活動しています。

池内:アスリートの方って、その瞬間しか勝負できないわけじゃないですか。とくに神野さんは、この前聞きましたけど、現役の間にマラソンとして走れる回数が決まっていますよね。20回、30回とチャレンジできるわけではなくて、本番のそのときに自分の最高のパフォーマンスが求められるわけですよね。今日はやめて、明日やり直そうというわけにはいかないような人たちなので。

だから、この些細なタオル1枚でテンションを落としてしまうようなことは嫌なので、テンションをちょっとでも上げるようなことができればいいなと勝手に思い込んでいるんです。ふふふ。

少しでもテンションが上がるようなタオルを

── 最後に、神野選手のファンの方、アスリートの方に、今回のコラボタオルへの想いなどをひと言お願いします。

池内:アスリートの方って、タオルはちょっとした休憩のときに使うと思うんですけど、そういうときにテンションが上がるような風合いを与えられたらと思っていて。ましてやタオルから汗のにおいがすると余計にテンションが落ちちゃいますよね。どんなに濃い汗かいてもにおいが出ないような形でテンションを上げられるように、そして、気持ちよく汗を吸ってくれればよいかなというふうに思っています。

牟田口:IKEUCHI ORGANICのタオルをはじめて使っていただく方が多いと思いますので、まずは実際にたくさん汗を拭いていただいて、吸水性だったり、においが全然しない部分だったり、そのあたりをご体感いただきたいです。

あとは、アスリートのみなさんには、本当にひとり1枚以上は使っていただきたいと思っていて(笑)、タオルに限らずタオルケットやポンチョなど色々種類もありますので、これを機にIKEUCHI ORGANICのタオル沼に入ってほしいなあと思っています。


(あとがき)

IKEUCHI ORGANICのタオルに触れ、代表をはじめとする「イケウチの人たち」の思想にお邪魔すると、自然とタオル沼に入ってしまうから不思議です。

IKEUCHI ORGANICと神野大地。

思想のある“異端児”同士が本気で考えて生み出したコラボタオルは、きっと多くの方の日常をよりいいものに、アップデートしてくれるのだと思います。

 

 

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