Text: yuki yoshida
2022年4月、神野大地が手がけるブランド「RETO(レト)」からランニングソックスが販売スタート。同商品は、日本三大靴下産地である兵庫県加古川市に自社工場を構えるUNIVAL(株式会社ユニバル)と共同開発し、約1年かけて完成した。
2月には実際に兵庫県加古川市にある工場を見学。本記事では、工場見学後にUNIVALの横山社長と神野が行った対談を公開する。
後編では、普段あまり知る機会がない靴下製造の“中の話”に触れていく。横山社長のこだわりやものづくりにかける想いを垣間見ることができるだろう。
ランニングには、ランニングに一番適した靴下を
神野:お話を聞いていると、靴下ってとても繊細ですよね。作るのにも時間がかかっていたり、そんなに高い商品ではなかったりがあると思うんですけど、どうして靴下にこだわり続けているのかっていうのは何か理由がありますか?
横山:そうですねー。うちの会社は製造も踏まえますと56年目に入っていて、創始者がうちの父で、私が二代目っていう形でやらせていただいてます。
兵庫県の加古川市の地場産業として靴下の製造があります。これは私もうちの父から聞いたんですけど、加古川市の志方町っていうところは昔綿花を栽培してたところで、そういう繋がりで靴下っていうのがこの地に生まれました。もっと古くからいうと、ある方が中国から編み機を1台持って帰ってきて、ここで育った綿花を紡いで靴下を作ったっていうのが最初だと聞いたことがあります。
私も「どうして靴下を?」って言われたら、正直なところ、父から継承しながらやってきたというところなんですが。同じように作ろうとしても職人が違うと同じものができないだとか、同じ機械を使っても職人によっては違うものができるだとか、そういうのも楽しみで、深掘りしていくともっと面白いことができるんじゃないかなっていうのはありまして。そういうのが、長年続けている理由かもしれません。
僕らは、健康は足元からって言っていて。足をサポートするっていうのは当然靴ですけど、そのなかに靴下っていうのがあって、みなさんが健康に明るく生活できるためのひとつのものだと思っています。もっともっと良いものを開発して、もっとみなさんに愛されるようなものを作れないかな?という想いがあるから継続してるような感じだと思ってます。
神野:本当に色んな靴下があって、それこそ100円で買えるような靴下も出てきてるじゃないですか。さっき健康は足元からっていう話がありましたけど、僕は高校生のときは靴下へのこだわりは持ってなかったんですけど、色々経験したなかで、靴下はパフォーマンス向上にも繋がるし、みなさんにもっと重要視してほしい部分だなって感じてるところです。この対談を見てくださってる方には、「RETO × IDATEN」が一味違う靴下だというのを感じてもらいたいなって思います!
そういえば、さっきUNIVALさんのほかの商品をいただいて、さっそく今履いてるんですけど、これもすごく履きやすいですね。
横山:ありがとうございます。
今神野さんに履いてもらってる「寒がり靴下職人が作ったソックス」というのはうちの商品で一番あったかい靴下なんですよ。
冬は暖かい、夏は涼しい、運動のときは汗を吸って、という風に、靴下を履くにも色んなシーンがありますよね。季節もそうですし、履くシーンを色々想定したなかで、それに一番適したものは何なのかを考えてまして。「RETO × IDATEN」に関してはランニングに適してる、「寒がり靴下職人が作ったソックス」に関しては寒さに適してる、シーンごとの一番の履き心地にこだわっています。
神野:それぞれのニーズに合ったものをっていうことですね。
横山:そうですね!ニーズに合ったものを一番良い価格でご提供できればと、そういう想いで作っています。
靴下=人海戦術 自慢の靴下には職人技が詰まっている
横山:最後に、私のほうから神野さんに1つ質問させてください。
今日、兵庫県加古川市のほうにわざわざ来てもらって。1年前から神野さんとやりとりさせてもらって、コロナ禍でなかなか会えなくてリモートばかりで、サンプルを送り込んでフィードバックをもらってっていうやりとりをずーっとやってきたなかで、今日こうやってわざわざお越しいただいて、うちの工場でどうやって靴下ができるのかっていうのを見ていただけたのがメーカー側としてはすごく嬉しいです。
商品ができあがったタイミングというのもあられると思うんですが、なぜ来ていただけたのかな?と、興味津々です。
神野:はい、これまでずっと競技で陸上をやってきて色んな靴下を履いてきたんですけど、どうやって靴下が作られてるかってところに興味を持ったことがなかったんですよ。でも、今回自分のブランドの「RETO」っていうところで商品を発売させていただくっていうことで、靴下がどうやって作られてるのかっていうところに単純に興味を持ちまして、見せていただけるのであれば見たいなと思いました。
やっぱり実際に見せてもらうと想像を超えてるというか。機械も自分では絶対に扱えなさそうな、見たことないようなもので。やっぱり自分で見るっていうのは大事な時間だったなという風に思いました。
あの機械、本当にすごいですよね……。
横山:うちの工場には技術者が今4人いて、みんな15年から20年、長い人は30年くらいのベテランの方たちばかりです。
よく、靴下ってボタンひとつでできてくるんですよねという風に言われるんですけど、みなさん工場を見てもらうと本当にびっくりされるんです。これだけ世の中が発展してるのに、人の手を借りないとできない人海戦術で、糸から製品になるまでに、たぶん繊維関係のなかで靴下が一番手間がかかってるんじゃないかなと思います。
神野:機械ではあるんですけど、職人の技が詰まってるなというのは見て感じました。
横山:ある程度コンピューター化されてるんで、ひとつの柄を描くとかっていうのはできるんですけど、同じものを同じ機械で作っても違うものができてくるんですよね。その人その人の味といいますか。料理人と同じやと思うんですけど、その人の感覚ですね。
同じ素材を与えられても、同じレシピがあっても、たぶん火の加減とかいうのがあったり。靴下も同じことですね。同じ糸で、コンピューターのデータも全部同じものを使ってるのに、違う工員になると違うものになる。そういうのが靴下の技術のなかにあるんで、これはなかなか1年や2年で習得できるものではないし、感性の問題なんでなかなか継承していくのも難しい。継承していくつもりなんですけど、若い人に継承するのは難しいなと感じています。それくらい靴下って細かくて繊細な商品なんで、そのへんが分かってもらえたら嬉しいです。
神野:それは今日見せていただいて感じました。
僕も最後の部分の作業をやらせていただいたんですけど、僕がやったときと職人さんがされたときとでは全然違って、僕はムラが出ちゃったんで、やっぱりちゃんとした人がやるのと僕がやるのとでは違うなと思いましたし、一つひとつやっていくからこそムラがおきないというか。
買う側としても「なんか前のと違うな」とかなっちゃったら大変じゃないですか。僕らも同じものが良いと思って買ったらまた同じように良いって思いたいので、それは人の力が詰まった商品だなという風に、自分も体験させていただきながら感じたことですね。
横山:ありがとうございます。
では、最後に一言。今後、神野さんもどんどん陸上界を背負って、個人では記録も出していただいて。最後はフルマラソンに向けて、当然「RETO × IDATEN」を履きながら、益々のご活躍を株式会社ユニバル社員一同祈願しています。ケガのないように頑張ってください。
神野:ありがとうございます。
本日は一緒に対談していただいて、ありがとうございました!