真夏の北海道マラソン「過酷なコンディションの中で自己ベストを更新できた理由」

Text: shun sato

RETO RUNNING CLUB 第6クール(2023年8月~2023年10月)。チームとして大きなトピックの一つが、クラブの同一大会への参加人数としては過去最多となる約30名が出場した北海道マラソンだ。


真夏の厳しい気象コンディションの間も公式練習会は開催された

今年のレースは、スタート時の気温が29度、湿度78%。レース中には気温が30度を超えるなど、非常に厳しい気象コンディションの中での開催となった。男子の優勝タイムは第一回大会以来2時間20分を上回り、女子も1989年以降で最も遅い優勝タイム。完走率も81.1%とフルマラソンとしては非常に低い数値だった。そんな北海道マラソン2023において、RETO RUNNING CLUB メンバーの中には自己ベストを更新したメンバーがいた。

厳しいコンディションの中、自己ベストを更新できた理由とは。そしてチームとして参加した北海道マラソンの感想についてインタビューで聞いた。


レース当日の朝、北海道マラソンスタート地点

「PBは速めのジョグの成果」是枝一摩さん

結果:3時間15分48秒 / レース前PB:3時間23分16秒(大阪マラソン2023)


フィニッシュラインで充実の表情

道マラは、秋冬のマラソンでサブ3を出すために、ペースは4分15秒で、30キロまでいく。その後は、タレても良いという感じで、現状どのくらいいけるのかというのを試すためのレースという位置付けでした。

スタート前は、絵(片山)さんが隣にいてくれたので練習会と変わらない雰囲気で、気持ち的にはかなり安心というか、平常心でいられました。最初の5キロぐらいは人が多くて、無理やり追い抜いていったのでムダに足を使ってしまい、落ち着かない感じだったんですけど、10キロぐらいでペースに乗れました。暑かったので、給水は一度に4カップぐらい取って、飲んだり、頭からかけたりしていました。それでも20キロまでは苦しむこともなく、絵さんともほぼ同じぐらいで気持ちよく走れていました。


片山さんとは普段の練習会から刺激しあっている

でも、20キロ過ぎから徐々にキツくなってきて‥‥。自分的には必死に走っているのに、時計を見るとペースが上がっていないんです。30キロ過ぎにはかなりのダメージが来て、もう4分15秒では押せない。このままいけば自己ベストは出せるかもしれないけど着地点が見えなかったので、メンタル的にもかなりキツかったです。

ただ、そこからあまりペースを落とさずに走れたのは、今まで培ってきた練習の成果かなと思います。僕は、たぶん普段のジョグのペースがみんなよりも速めだと思うんです。4分40秒ぐらいで走っているんですけど、そのくらいだと永遠に走れる感じです。そのジョグのおかげで後半、キツイところでも普段走っているレベルは維持できていました。

今回は、PBを更新できましたけど、4分15秒で30キロまでいけたら自信にもなったと思うんです。でも、そこまで行けなかったので、次につながるような自信にはならなかったですね。みんなと比較すると、そこまでバテていないので、夏場のレースでも走れたのはひとつ評価できるのかなと思いますけど、今回の結果だけを見ると秋冬のレースでどこまでちゃんといけるのかなという不安があります。高い目標を見過ぎたというか、もう少しすべきことを突き詰めて自信となるものを得たかったです。

でも、今回の道マラは本当に最高でした。去年はひとりで現地に入って、どこでご飯を食べていいのか分からないので適当にご飯を食べて、翌日に備えて早く寝ました。翌日、朝食を摂ってアップを一人でやり、走って帰ってくるだけだったので、正直、あまり楽しくなかったんです。でも、今回は前日の夜からみんなでご飯を食べて、朝はみんなでアップして、スタートラインにいけば絵さんがいて、ゴールしたら聖也さんがいてくれた。練習会プラスマラソンの祭り感が重なって、ほんと、楽しかったです。

「前半は楽しく、後半は地獄。でも、楽しめました」山本明日香さん

結果:3時間28分43秒 / レース前PB:3時間37分27秒(京都マラソン2023)

レース前は、まったく不安はなく、「とにかく楽しもう」みたいな気持ちでした。北海道だったので、旅行感覚でテンションが上がってしまって、マラソンの苦しさよりも楽しみが上回っていました。タイムの設定は、3時間20分切りです。道マラ前の練習会で聖也さんに「3時間20分を切れる力はあるから、4分40秒~4分45秒でおしていこう」と言われて、それしか考えていなかったです。


トレイルランニングでは主要大会で世代別入賞する程の実力者

スタートしてから10キロ過ぎに早くもキツくなりました。暑さが影響したというよりもペース的にちょっとしんどいなって思ったんです。このままいくと42キロもたないと思い、ペースを落としたんですが、それが良かったらしく体が少し楽になりました。この時点で、20分切りが無理なら、せめてサブ3.5をやりたいと思って、それほど深く考えずに目標を変えました。

レース途中、聖也さんを見かけたり、そろそろAチームのメンズが来るかなって思って、人を探すのに必死で、時計とか見ずに走っていたんですが、25キロから30キロは一番ラップが良ったです。自然とラップが上がっていたので、改めて楽しんで走るのってすごく大事だなぁって思いましたね。

でも、30キロ過ぎは地獄を見ました。みんなに会えなくなって急にメンタルが死んだのか分からないですけど、呼吸が浅くなってしまったんです。足と上半身が合わないし、リズムが全然取れなくなって苦しくなって‥‥。途中で歩いたり、給水で止まったり、深呼吸して、息を整えてからまた走って、を繰り返していました。途中、莉玖(今川)君に氷をもらったり、35キロで美和(小渕)ちゃんに経口水ゼリーをもらったんですけど、呼吸が苦しくて口に入れられず、そのまま握りしめて走っていました。

ラスト1キロを一緒に走った桜井さんと

一番キツかったのは、ラスト1,2キロですね。ゴールまであと何メートルとか書いてあるのに、全然見えてこなかったんです。「どこ?どこ?」と探しながら走っているとラスト1キロでうしろからチェリー(桜井徹哉)さんに「俺についてこい!」って声をかけられたんです。もっと前にいるかと思っていたので、びっくりしました。そこからついて行こうとしたんですけど、さすがに速過ぎました。頑張ってゴールしたら電光掲示板の表示が3時間30分53秒になっていて、グロスでサブ3.5をいけなかったのが悔しかったです。給水とかで止まったからだなぁ、もったいなかったなぁ、もうちょっと頑張れたのにと思いました。

今回は終わった後に自分の成長を感じました。今回で2回目のフルマラソンなんですけど、1回目は終わった後、歩くのがめちゃキツかったんです。でも、今回は疲労感もなく、翌日の朝もジョグに行けたので、体力がめちゃついたなぁって実感しました。レース後の打ち上げも楽しかったですし、翌日にはトリトン(回転ずし)やエスコンフィールドにも行き、北海道を満喫しました。ビールジョッキをもらえなかったのは残念でしたけど、なんやかんや私が1番道マラを楽しんでいたと思います。また、来年も走りたいです(笑)。

「あと、3分縮めたかった」松沢衣利子さん

結果:3時間43分56秒 / レース前PB:3時45分29秒(名古屋ウイメンズ2023)


クラブのイベントには積極的に参加している

道マラ前の練習会の終わり、神野さんに「応援の言葉ください」とお願いしたんです。そうしたら「松沢さんは、3時間40分だね」と言われたんです。いや、それ、無理でしょうと思ったんですけど、結果、タイムが3時間43分だったので、あと3分頑張ったら達成感はだいぶ違ったのかなぁと思いました(笑)。

スタートしてからは、暑かったので塩飴(5キロ毎で1個ずつ)をなめつつ、エイドでしっかりと給水したり、水をかぶったりしていました。そこでけっこう時間を使ってしまうので、少しペースを上げて給水でゆっくりと時間を取るように切り替えたんです。25キロぐらいまではRETOの人を見つけて、声を掛けたりして、それがすごく楽しくて全然キツさを感じなかったです。普段ひとりで走る10キロの方がつらいなぐらいの感じで気持ち良く走ることができました。

折り返してからは、RETOの人をあまり見つけられなくなったので、まずは31キロにいる莉玖(今川)君を目指して、次は前半に会えなかった美和(小渕)ちゃん、マッキー(小山内真紀)さんを絶対に見つけたいなって思って走っていました。莉玖君の氷はネットに入っていて、これ凄いなって感激して、元気が出ましたね。

最後の方で径(新沼)さんに会ったんですが、普通に歩いていたんです。「大丈夫かな」と思いつつ、径さんを越えて、しばらく一人で走っていたんですけど、ラスト1キロぐらいかな。径さんが追いついて来て、「最後、行くぞ」って言われたんです。直線、ガーミンでは4分ぐらいだったんですけど、なんとかついていけてゴールすることができました。ラップを見ると30キロ以降、そんなに落ちていなかったので、それは自分でもびっくりでしたね。


ラスト1キロを一緒に走った新沼さんと

今回、PBを更新できたのは、ひとつは月間200キロをちゃんと走れたのが大きいです。名古屋ウイメンズの前の2月は体調不良もあり月間96キロだったんです。聖也さんに「200キロは走りましょう」と言われたのですが、ずっと越えられなくて7月に初めて200キロを超えました。それは通勤ランが大きくて、家から会社まで片道で8キロから10キロ取れるので、出勤前後にできるだけ走るようにしていました。あと、体重ですね。5月の富士見合宿の時、最後の林道コースがすごくきつくて、体が重く感じたんです。富士見合宿の帰りの車の中で、1キロ痩せるとタイムが2、3分ぐらい縮まるよっていう話になり、それから道マラまでに3キロ落としました。あと、RETOの練習で短い距離ですが、4分台で走っていたので、今回の5分15秒というペースは気持ち的に余裕を持って走ることができました。

もちろん反省もあって、今回は初めてナイキのヴェイパーを履いたんですけど、途中から足首が不安定に感じて、ふくらはぎが痛くなったんです。レース前は、長くて15キロぐらいしか履いていなかったし、筋力が足りないのもあるので、次回はシューズに足をうまく合わせられるようにしたいです。

今回の道マラは、今までのレースの中で一番楽しかったです。参加人数も多かったですし、練習会から道マラに向けてがんばろうっていう雰囲気がありました。合宿の延長でレースに出たみたいな感じだったので、翌日も含めて満喫できました。

「PBですが、歯痒いです。今シーズ中に結果を出したい」成相陽平さん

結果:4時間11分22秒 / レース前のPB:4時間28分33秒(かすみがうらマラソン2023)


RRCに入って初のフルマラソンが北海道マラソンだった

走る前の準備と調子は良かったです。レース当日の朝、すき屋でチェリー(桜井徹哉)さんと朝定食の納豆卵かけご飯を食べて、かなり満たされました。目標タイムは、3時間45分、最低でもサブ4でという設定でスタートしました。

でも、前半で終わりましたね。暑さで熱中症のようになり、トンネルを越えたあたりでトイレに行ったり、ボロボロで‥‥。美和(小渕)ちゃんやマキ(小山内真紀)さんが待っていてくれるのを心の支えにして走っていました。新川通りで雨が降ってきたのですが、ちょっと涼しくなって、これでようやく走れるわって感じでしたね。聖也(高木)さんとか速い人がスライドで通り過ぎるのを目で追ったりして、そこから徐々にペースをつかめました。折り返しのところからは、少し前にさやか(松本)さんやサリー(西尾紗梨愛)がいるから追いつけるかなとか、人に会うのとエイドを楽しみにして走っていました。

35キロ過ぎてマキさんと美和ちゃんがいて、二人がしゃがんで作業をしているところ声を掛けさせてもらったんですけど、そこで少し話をすることでかなり復活しました。雨が上がってからは蒸し暑さがすごかったので、5分20秒ペースで走りつつ、エイドでしっかりと止まって給水を取るのをずっと繰り返していました。そのおかげで足は残っていたんですが、結局、止まっていたことで時間をロスして、サブ4にも届かなかったことは本当に悔しかった。

でも、得られたものもありました。一つは、秋本(真吾)さんの講義が非常に大きかったです。前はストライドの大きさを意識するあまり顎が上がって走って、そのせいかすぐにキツくなっていたんですけど、フォームをRETO の練習会から意識するようにしていました。そのおかげでラクに走れるようになり、その成果が道マラでも感じることができたんです。また、今回、チェリーハウスに宿泊したんですが、Aチームの人ばかりなので、試合の臨み方、ジェル、食事とかすごく勉強になりました。自分も早くみんなのレベルに追いついて、同じような話をしたいと思いました。

公式練習会以外のイベントにも積極的に参加してメンバーとの親睦を深めている

あと、僕は5期からなんですけど、1期から4期の方ってそれまでの時間の蓄積があって、お互いのことをよく知っていて、仲が良いですよね。だから、自分としては練習だけじゃなく、いろんなところに顔を出して、色んな人と話をするのをすごく大事にしていました。今回、チェリーハウスでチームのみなさんと一緒に過ごしたり、打ち上げでいろんな人と話をすることができたのは、すごく自分にとって有意義な時間でした。

レースでPB更新しましたけど、うーんという感じです。昨年レガシーハーフで初レースを経験し、道マラは初めて本格的なトレーニングをして臨んだレースでした。あの気候だし、「サブ3.5の人がサブ4レベルのタイムだったよ」とか、「サブ3レベルがサブ3.5ぐらいのタイムだから仕方ない」とか言われるんですけど、明日香(山本)ちゃんやえり(松沢衣利子)ちゃんは良いタイムで自己ベストを出しているじゃないですか。同じ条件の中で、良いパフォーマンスを発揮しているのを見ると、自分の力のなさを感じました。自分はタイムだけではなく、走るのが楽しいからレースも走るというスタンスですが、道マラの結果は自分にちょっと期待していただけに歯痒いというか、悔しかったです。

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