まだ、若手に抜かれるわけにはいかない

RRC member Interview

text:Shun Sato

2023年 チーム総合MVP 唐津孝二さん

昨年7月のゴールドコーストマラソンで2時間48分18の自己新をマークし、サブエガを達成した。それまでの持ちタイム2時間53分03秒(東京マラソン2023)から5分近くも縮める快走だった。

「週1,2回のきつめのポイント練習を積んで、距離も踏めていたので走れる自信はありました。でも、実際に目標をクリアした時は、すごくうれしかったです」

快心のレースでPBを更新したゴールドコーストマラソンのFinish

RETOとの出会い

喜びの表情を見せた唐津さんは、中高時代は陸上部。400mや幅跳びの選手で、長距離は社会人になってから始めた。仙台に転勤し、知り合いもいないので、一人で何かできるものがないかなと思って始めたのがジョギングだった。楽天スタジアムのあたりをぐるりと回って走っていたという。その後、松島のハーフマラソンに出場して1時間40分で走り、その1年後、第1回東北みやぎ復興マラソンに出てサブ4を達成した。

「マラソンが終わった後は、めちゃくちゃきつくて、もう嫌だと思ったんですが、ちょっと経つとまた走りたくなって。マラソンあるあるですけど(笑)」

東京に戻って来てからは、ひとりで神宮外苑や皇居周辺を走っていた。サブ3を狙って走っていたが、なかなか越えられず、「自分ひとりでは限界かな」と思っていた時、神野大地のYouTubeを見て、RETOに参加した。それから1年ちょっとで、サブエガにまで到達した。

2022年6月 RRCが発足して初の合宿にも参加した

「さすがにここまで上がって来れるとは思っていなかったので、驚いています。刺激になったのは、同世代ですね。絵さん(片山絵さん)、つっちーさん(土本優作さん)とか、同じようなタイムを狙っている人たちの頑張りを見ていると、自分もという気持ちになりました。絵さんは調子が良かったので、シーズン中に抜かされちゃうなって思っていたんですが、なんとか逃げ切れてよかったです(笑)」

Beyond2023では12kmで集団から遅れ苦しい走りとなった

練習メニューで参考にした2冊

唐津さんは、ゴールドコーストでサブエガを達成した後、11月につくばマラソン(3時間08分22秒)、12月にはBeyond2023(3時間07分36秒)に出走した。だが、思うような結果を残すことができなかった。

「Beyondは、東京マラソンに向けてマラソンペースでと考えていたんです。3分55秒ぐらいで入ったんですが、ハーフまでは最低でもいけるかな、できれば30キロまで頑張ろうと思っていました。でも12キロで撃沈してしまって(苦笑)。その前に故障があったりして、体が出来ていない状態だったので、東京まで仕切り直しだなと思いました。現状を知ることができましたし、それほどショックはなかったです」

唐津さんは、Beyondの少し前から練習メニューを変更していた。

参考にしているのは、「ダニエルズのランニングフォーミュラ」「アドバンスト・マラソン・トレーニング」だ。ランニングのケアは、中野ジェームズ修一氏監修の「最高のランニングケア」をよく見ている。「アドバンスト・マラソン・トレーニング」は練習メニューが詳細に掲載されているという。

「あと、YouTubeで検索して、おもしろそうだなと思うものは見ています。練習ノートとかはつけていなくて、自分の頭の中で1週間のメニューを組み立てています。練習後の感想とかも記録していないですね。ストラバにもあまり書かないです。本当はした方がいいと思いますが、意外と頭の中に入っているので、レース以外は書き記すことはないです」

最もレベルの高いA+チームで練習を行う唐津さん

練習をやり切る理由

練習は、ゴールドコース前のような負荷の高いポイントから「ちょっとつらいかな」というレベルのポイントに切り替え、その回数を増やしていった。練習時間は、子どもが生まれたこともあり、自由に使える時間が限定されたので、ある曜日の朝と夜にポイントをして、翌日はジョグをする。1日2部練みたいなスタイルで進め、その結果、通常(500キロ前後)よりも月間走行距離が増え、550キロに届いた。RETOのメンバーなら存じているだろうが、唐津さんはRETOの個人練習やタムケン練にもほとんど参加せず、単独で練習をこなしている。

「僕は、長期の練習プランを立てず、だいたい1週間単位で組み立てています。ひとりでやるのは苦にならないのですが、その練習ができなかったり、うまくいかないと気持ち悪いというか、イライラしてしまうので、無理やりにでもこなすようにしています。あと、RETOでは、モチベーションでいい刺激を受けていました。アマネ(有本周翔さん)とか若い人がすごく成長してきたんですけど、まだ抜かれるわけにはいかないという気持ちがありました(笑)」

東京マラソンへの手応えを感じたのは、レースの3週間前だった。久しぶりにRETOの練習会に参加し、1600mのインターバル6本(5分44秒)の練習を余裕をもってこなせた。

「その時、東京は大丈夫、行けるかなと思いました」

その通り、東京マラソンで唐津さんは、2時間47秒30をマークし、48秒縮める自己新を達成した。

「最初と最後のレースで、しっかりとタイムを出せて、1年間、やり切った感がありました」

そう言って充実した笑みを見せた。

公式練習会以外は基本的に1人で練習を行っている

練習の効率化

サブエガという大きな目標を達成した後、最近は、なかなかRETOの練習会に参加できなくなっている。昨年、第1子が生まれ、家族での時間が必然的に多くなった。そのため以前のように時間をかけて距離を踏む練習が難しくなり、ポイント練習も時間が限られた中で行っているという。

「最近は、東京マラソンの前もそうだったんですけど、ポイント練習は自宅近くのANYTIME FITNESSというジムでトレッドミルを使ってやっていますし、筋トレもしています。ポイントは、インターバル系とかをサクッとやって、30-40分ぐらいで上がる感じです。トレッドミルは、スピードを出せば心肺機能を高められるし、足への負担も少ない。時短でいい練習ができるので、けっこう重視しています」

唐津さんの練習は、合理的で無駄がない。走っている時、「がんばれ」と自分を励ます言葉を呪文のように唱えているというが、ひとりでしんどいメニューをやり切るメンタルの強さがある。自分のことをよく理解し、メニューから練習まで自己完結できるので、ストレートにタイムに届きやすいのかもしれない。

限られた時間で合理的な練習を行い結果に繋げてきた

1期生から見たRETO

唐津さんは、RETOの発足当初からのメンバー(1期生)だが、当時から今のRETOをどう見ているのだろうか。

「まさか、こんなにでかくなるとは思わなかったですね(笑)。最初は運営サイドのみなさんが引っ張っている感じでしたが、今はメンバーがそれぞれ動いてチームも動いている感じです。いろんなタイプの人がいて、いろんな人を受け入れるコミュニティがたくさんできて、いろんなところで練習会やって、ほんとすごいなって思います。ただ、人が増えた分、全員の顔と名前が一致しなくて(苦笑)。練習会だけだとなかなか話ができないので、本当は個人練習会や合宿にもいきたいんですけど、今は子どもが小さいですし、なかなか難しいですね」

唐津さんは、安定したスピードを出せることから「ペーサーをやってほしい」という声がメンバーからよく聞こえてくる。そういうリクエストに応えることもあるが、過去、「からっぺ練」が開催されたことはない。

「ペーサーとかは都合が合えばやっていきたいです。個人練習会は、別に嫌いなわけじゃないですけど、他にやる人がいるので、そこに任せようかなと(苦笑)」

片山絵さん(右)とは同じ1期生として切磋琢磨してきた

唐津さんの次の目標は、2時間45分切りだ。2分30秒をこれから縮めていくことになるが、レースはまず北海道マラソンに出場を決めている。2年前、3時間04分58秒に終わり、サブ3を達成できなかった。

「まずは、道マラですね。2年前、悔しい思いをしたので、そこでサブエガをするのが最初の目標になります。その後は秋のレースで、45分を切りたいですね。今年はA+のメンバーが何人か45分切りを目指す人がいたので、自分も負けないようにしっかり45分を切っていきたいと思っています」

唐津さんの練習メソッドは、参考にしている人が多い。2時間45分切りを実現した後には、またそのノウハウがRETOのメンバーに伝えられるだろう。その時には、もしかすると初めて「からっぺ練」が行われるかもしれない。

 

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