Founder神野大地が語るRETOの歴史と未来

Text: shun sato

RETO立ち上げのきっかけ

RETOの事業内容はプロダクトの販売に限らず、今やランニングクラブ事業、そしてメディアにもその域を広げようとしている。
現役プロアスリートでもある神野はなぜRETOを立ち上げ、今後、RETOで何をしようとしているのだろうか。

RETOは、ネックレスの販売から始まった。
「4年前、ネックレスの販売事業をスタートするにあたって立ち上げたのがRETOです。ビジネスとしてこういうことをやってみたい、と考えていたというよりは、現役アスリートがブランドを立ち上げるのって新しくて面白いな、くらいの気持ちでした。ブランド名のRETOはスペイン語で挑戦という意味です。僕の人生を振り返った時に、常に”挑戦すること”を大切に走り続けてきたことから名付けました。スペインは特に縁もゆかりもないですが響きがかっこいいなと(笑)」


RETO商品の第一弾として発表したネックレスの「ブラック×シルバー」は現在も販売中

RETO商品に対するこだわり

ネックレスから始まったプロダクトは、その後、さらに進行し、今はランニングソックス、タオルにまで及んでいる。とりわけランニングソックスは、今や多くのランナーに支持され、あちこちの練習会やレースで見かけるようになった。
神野は、それぞれのプロダクトにこだわりがあるという。
「商品を販売する上で大事にしているポリシーは、本当に自分が自信を持ってお勧めできるものを商品化するということです。そうして、できるだけ多くの人に使ってもらって、その良さを実感してほしいと思っています」
現役トップアスリートの作るプロダクトは、もともとあるものに名前だけつけて販売しているだけだろうと思う人もいるだろう。だが、神野はその見方の逆を突く。


ランニングソックスは普段のトレーニングやレースで常に着用している

ソックスはマラソンを走り始めてその重要性に気付き、5,6年前から自分に合うものを探していたという。いろんなタイプの靴下を購入し、試してきた。神野が「これが一番合っている」と感じていたのは兵庫県加古川市の靴下メーカーユニバル社が製造するIDATENソックスだった。自費で購入していた縁から、コラボレーションして商品を作るプロジェクトが始まった。加古川市にある工場にも出向くなど、約1年間、試行錯誤を繰り返して昨年ついに完成し、販売になった。発売初月にはECでの販売数が500足を超えるなど、予想を上回る反響があったという。


株式会社ユニバルの加古川工場で製造過程を見学

次に販売したタオルも、今治の工場に足を運んだ。そこで製作過程を見学し、制作過程の拘りについて話を聞き、自分のプロダクトに対する思いを伝えた。小さなことかもしれないが、実際に現地に足を運んで現場の声を聞き、より良いプロダクトを生み出していこうという熱意は、必要なもの。それが、ユーザーに伝わるからだ。
「商品のサンプルが届きました。はい、これでいいです。で、終わりじゃ、作り手の熱意がなかなか伝ってこないと思うんです。でも、現場にいってコミュニケーションを取ることで提携会社の方や、職人さんも僕も商品に対する熱量が確実に高まっていく。そうして良質の商品が生まれていくと思うし、それをみんなに知ってもらいたいという意欲も高まります」
自分のブランドのプロダクトに対する知識と責任を持つために大切にしていることだという。


神野とIKEUCHI ORGANICの池内代表

大人向けのランニングクラブ運営

RETOが展開するもうひとつの事業がランニングクラブ「RETO RUNNING CLUB(RRC)」の運営だ。
昨年5月、30名程度でスタートしたランニングクラブだが、現在は70名以上のメンバーを抱える。
「現役のプロランナーがクラブチームを作り、市民ランナーの皆さんの目標達成をサポートするという目的でスタートしました。これは、全国的にも初の試みだと思いますし、僕自身のチャレンジでもありました。最初はどういう感じでメンバーと接すれば良いのか、どんなサービスを提供していけば満足してもらえるか、いろいろ考えましたね。実際に運営していく中で自分の立ち位置とか、やり方が見えてきて、今ではメンバーよりも僕自身が月2回の練習会を楽しみにしていると思います(笑)。そう思えるクラブを作れていることが本当に幸せなことですよね。」


RRC発足直後の公式練習会

ランニングクラブでは公式練習会が月に2回開催されている。クラブ合宿があり、さらに座学として、フィジカルトレーナーの中野ジェームズ修一やスプリントコーチの秋本真吾らが講師となってリモート講座が設けられ、実践と知識と両立するスタイルでランナーをサポートしている。それ以外にもメンバーが個人練習会やイベントを開催することでメンバー間の交流が活発化し、コミュニティが生じている。
「RRCは、本当にメンバーに恵まれていて、目標達成のために真剣に取り組みつつも、みんなで意見を出し合って、みんなで速くなろうという風土が出来ています。自分が頑張るだけじゃなく、他のメンバーの目標も応援してくれる。実際、僕もこれまでは応援される立場だったんですけど、今年の名古屋ウイメンズでメンバーを応援して、すごく楽しかった。今は、年間のスケジュールを決める際、このレースはメンバーが多く出るので、仕事とかぶらないようにしようとか、考えるようになりました(笑)」


メンバー自主企画イベント「小田鎌」

クラブのメンバーは入会の際、志望動機などの項目を埋め、応募する。合格した人は会費を支払って練習会に参加する。これが例えば、目標がなくても大丈夫、お金はいりません。走りたい人は誰でもどうぞ、走って飲みましょう。そういうチームがあってもいいが、それではRETOのようにチームがコミュニティ化して、お互いを高め合っていくようなクラブ作りは難しい。会費を払う側には学ぼうという意欲や目標達成への意欲があり、運営サイドには満足いく内容を常に提供する責任が生じる。両者が高いレベルで合致しないと大きな熱量は生まれない。
「ランニングを通して人生を豊かにできると、クラブ運営を通して本気で思えるようになりました。目標を持つことの大切さも改めて実感しています。Challenge is successというテーマも掲げていますが、みんなが目標を達成したいという思いを持って、それに向けて挑戦していることがRRCを作り上げる上で大きなポイントになっていると思います」


真冬で雨の日の公式練習会

ただ、目標達成だけに突き進んでしまうと、どうしてもメンバー間で温度差が出てしまう。目標達成へのスタンスやアプローチはそれぞれあり、誰もが同じレールに乗る必要はない。
「目標達成した人がすごくて、できなかった人はそうではないみたいな空気というのは絶対に作りたくないんです。目標を持って、前向きにチャレンジするというマインドが一番大事なことだと思っているし、何より皆さんプロではないですからね。”楽しい””やりがいを持って取り組める”といった前向きな気持ちでランニングと向き合って欲しいので。ランニングに対してモチベーションが上がらない時期があるのも当然です。ただ、一つだけ僕がメンバーに対してお願いしていることは「(少なくとも)年に1度は目標を持ってフルマラソンに挑戦しましょう」ということ。ただ、RRCに入れば自然とそういう気持ちになれると思うし、挑戦するために必要なサービスを提供できていると思います。」


公式練習会では神野自らペーサーも務める

オウンドメディアで解決したい課題

RETOは、これまでの活動を通して、一般のランナーにも徐々にその存在を知られるようになってきている。それは口コミもあるが、RETOとしてSNSでの発信、各媒体への露出などでクラブとしての価値を高めていくというところにも重きを置いていることが大きい。
プロダクトの開発と販売、RRCのランニングクラブ事業、そして3本目の矢としてRETOが考えているのが、このメディア事業だ。
現在は、情報過多の時代だ。ヤフーなどの巨大なプラットホームでニュースや記事が配信され、SNSでは個人が呟き、noteなどメディアプラットホームを使い、個人でも多くの情報を発している。情報が溢れている分、自分が本当にほしいものにたどり着くまで時間を要したりすることもある。その課題を解決するために、RETOはオウンドメディアを立ち上げるという。


トップアスリートのフィジカルトレーナーを務める中野ジェームズ修一氏もRRCで講師を務める

神野は、カテゴリーをランニングに限定し、そこに付随するあらゆるテーマを網羅し、ランナーに必要な正しい情報、モチベーションを得られるようなメディアを作り上げていきたいと考えている。
「中学からプロまで選手としてやってきた経験もありますし、その中でトレーナー、ドクター、栄養士さん等、各分野のプロの方々から多くの情報を学んできました。そういう情報を整理して、これまで築いてきた繋がりも活かして正しい情報を発信していきたいなと。僕らにとっては当たり前でも、意外とまだまだ知られてない正しい情報もあるなと感じることも多いんです。マラソンに初めてチャレンジする方から、タイムを追い求める方、怪我やモチベーションで悩んでる方にとってプラスとなる情報を発信していきたいと考えています。マラソンで目標を持って取り組むランナーが『RETOで得られる情報は良いよね』と言ってくれるようなサイトにしたいんです」

2022年から本格的に始動して、まだ1年半。それぞれの事業を紐づけし、あるいは拡散していくことで多くのランナーに有益な情報とプロダクトを提供していく。
攻めるRETOが今後、どう成長していくのか、注目だ。

 

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