「RETO」に込めた6つのこだわりと開発裏話 ──神野大地×靴下老舗メーカー社長対談(中編)

「RETO」に込めた6つのこだわりと開発裏話 ──神野大地×靴下老舗メーカー社長対談(中編)

Text: yuki yoshida

2022年4月、神野大地が手がけるブランド「RETO(レト)」からランニングソックスが販売スタート。同商品は、日本三大靴下産地である兵庫県加古川市に自社工場を構えるUNIVAL(株式会社ユニバル)と共同開発し、約1年かけて完成した。

2月には実際に兵庫県加古川市にある工場を見学。本記事では、工場見学後にUNIVALの横山社長と神野が行った対談を公開する。

中編では、ランニングソックス「RETO × IDATEN」のこだわりポイントについてたっぷり語っている。

「普段もキツい練習の時も同じ靴下がいい」 理想を叶えるソックスが完成


神野:
「RETO × IDATEN」の靴下に関しては、1年ほど前から「こうしたほうがいいんじゃないか、ああしたほうがいいんじゃないか」と話し合いを重ねてきました。

「RETO × IDATEN」は、UNIVALさんが販売している「IDATEN」という靴下がベースになっていますが、「IDATEN」のこだわりについて教えてください。

① できる限り薄くて軽い

横山:開発段階で小林祐梨子さんに試着をしていただいて、改良ポイントを結構いただきました。その際に、ランニングに関しては「できるだけ薄く、軽く作ってください」というアドバイスがありまして。

軽く薄く作るのは強度的にはまずいんです、破れやすくなるんでね。靴下を作るとなるとメーカー側からは逆のことを言われるなあというのがあるんですが、「もう少し薄くできますか?」ということでどんどん改良して、結構軽めの薄手の商品にできあがっています。

② 特許取得の「ハニカム構造」が生み出す、程よいフィット感

横山:特徴としましては、ハニカム構造というのがあります。従来のテーピングをもう少しランニング寄りにできないかっていうところで開発を進めたものです。ハニカム構造は六角形の集合体になっていて、この六角形の集合体でテーピングを実現しています。

ハニカムっていうのは蜂の巣という意味です。蜂の巣は六角形の集合体でできていて、踏んづけられても復活して膨れあがってくるんですよ。外敵にいくら圧力をかけられても卵を守る、そんなような構造です。

六角形の集合体は、構造上圧力に強く、外敵に強い形と言われていて、おもだっては航空機の一部や建築関係の柱に使われています。調べると色々六角形が出てくるんですね。

うちの元々あるテーピングというのはこういう六角形ではなくて、締め付ける形になってるんですけど、六角形にすることによって6つの方向から圧力をかけて、満遍なく足に圧力がかかります。どこからの角度でも同じような圧力がかかってくるように仕上げたのがこの「IDATEN」なんですよ。

よくあるテーピングソックスっていうのは、みなさん、単に締め付けが強いと感じられることもあるかと思うんですが、この「IDATEN」に関しては、履いてもらうと「あれ、締め付けがあまりないな」という風に思われます。時間が経つにつれて足に沿うように密着するっていう商品なんで、どんな足の形にも必ず合うような構造になってます。

神野:テーピングソックスって、僕もほかのメーカーさんのを履いてたこともあったんですけど、結構締め付けが強いんで、それが気になっちゃう。パフォーマンスとしては上がるって言われるんですけど、でもやっぱり僕は気になっちゃうので、なんか違うなって思うこともありましたし。「RETO × IDATEN」は、「これは本当にテーピングソックス?」っていうくらいスムーズに履けるっていうところと、程よい締め付けが良いですね、僕としては。

③ シリコンじゃない滑り止め

神野:滑り止めにもこだわりがありますよね。さっき工場で「この部分は糸が違うんだよ」っていう話を聞いたんですけど、ブツブツを付けずにこういう糸でっていうのは、何か理由があるんですか?

横山:先ほど滑り止めの違和感について神野さんが言われたことなんですけど、「IDATEN」の監修をしていただいた小林さんにもちょうど同じようなことを言われました。だいたい滑り止めのソックスにはシリコンがくっ付けてあります。スポーツソックスは特にそれが付いていて、それを付けることによって当然滑り止め効果はあります。

ランニング、陸上の方には、できるだけそれを薄く作ってほしいという要望があって。素足感覚を求められるなかで、滑り止めっていうのがすごい邪魔になると。やっぱりシリコンなんで、どうしても凸凹で、それが特に長距離に合わないんじゃないか?という話がありましてね。

で、この糸、これ、滑り止め糸なんですよね。だから当然編み込むことができますね。しかも同じ薄さでできるので、シリコンにある凸凹や違和感がまったくないんです。それでいて滑り止め効果があるというものなんです。

④ 独自の技法でアーチアップを実現

横山:あとは、土踏まず部分にもポイントがあります。朝起きてから夜まで、だんだん土踏まずが落ちてくる(アーチが落ちてくる)というのが人間にはあって。特にスポーツをされている方にとって足の甲は大事な部位で、アーチが落ちてくるのは足の疲労とケガのもとっていうのがあります。

そこを少しでも靴下で改善できるように、土踏まず部分を強く押し上げるっていうのを工夫してあります。テーピングで足首を固定しながらアーチを上げるという理想の靴下になってます。

⑤ 特殊な糸で吸水速乾 & 破れにくい

神野:先ほどの薄くて軽い靴下っていう話のところで、実際は、これまで僕が履いてきた靴下のなかで、「IDATEN」より薄い靴下もあったんですよ。でも薄すぎて「これ、履いてる意味あるのかな?」って感じた靴下もありました。なんで、この薄さが僕にとっては絶妙というか、分厚くなくて。靴下が分厚いと後半蒸れて足も浮腫んでくるんで、靴の中で窮屈になるとかもあると思うんですけど……。この絶妙な薄さが、薄すぎず厚すぎず一番靴にもフィットするというか、走りをサポートしてくれる薄さかなと僕は思ってます。

横山:その通りですね。

作りに関しても色々やってますけど、素材に関してもこだわってます。今神野さんが言われたように薄く軽く作るっていうのは、靴下業界だといくらでもできるんですよ。で、これ、やらしい話になるんですけど、薄く軽く作るとなるとそれだけ糸を使うのが少なくなるんで、コストをだいぶ抑えられます。

だから薄く軽くと言われると、こちらとしては「それでいいの?」っていう話になるんですけど、できるだけ薄く軽くというのはランニングするうえで必要って聞いてるんで、じゃあほかにできることはないかなというところから、素材にこだわってみようかなと。

「IDATEN」にはポリエステル100%の吸水速乾の糸を使っているんですけども、その吸水速乾のポリエステルの糸の太さがレギュラーのものよりちょっと太いんですね。それで、ほかにないタッチができあがってまして、企業秘密で糸の名前は言えないんですけど、薄く軽く、それでいて丈夫にできあがってます。

神野:確かに破れにくいですよね。

横山:それはみなさん言われますね。

神野:僕は、靴下は破れるっていうよりは薄くなってきて次に替えるっていう感じなんですけど、破れにくいっていうのは、商品を販売する側からすると破れないと新しいのを買ってもらえないんでアレなんですけど(笑)、それこそ学生とかって靴下にそんなにお金をかけるのがなかなか難しいところもあるんで。長く使えるっていうのはアスリートにとっては結構重要だと思うので、丈夫というのは僕も履いてて感じるところですし、この商品の魅力ですね。

⑥ 足がカッコよく見える丈の長さ

神野:機能面に関してももちろんなんですが、「RETO」のコラボ商品として僕がこだわったのが丈の長さなんですよ。

もともと「IDATEN」の従来の商品はちょっと「RETO × IDATEN」よりも短いくらいで、くるぶしのちょっと上くらいの丈の長さですよね。その長さでももちろん良かったんですけど、今って結構厚底シューズがメインになってきて、アキレス腱にシューズが当たるんですよ。

で、その状態で当たりながら何キロも走っていくと、擦れて皮が剥けたりっていうのがあって。靴下1枚挟んどくと、そういうのも予防できたりするんですよ。

あとは単純に、僕的には、足がカッコよく見える、足が長く見える、鍛えた選手の足がうまく靴下とバランスがとれて見えるっていうのもあったんで、この長さっていうところは「RETO」のコラボ商品としてこだわらせていただきました。


前編はこちら後編はこちら

ブログに戻る